[情報] 緒方恵美の、銀河で、ホエホエ。vol.51

作者: OGATA (HARUKA)   2006-03-30 17:46:27
◆◇ 「 緒方恵美の、銀河で、ホエホエ。」 ◇◆   2006年3月30日発行
                 vol.51 「年度終わりの、ふしぎ旅。」4/4
 はじめに。
 これは4号続きの「年度終わりの、ふしぎ旅。」の、4編目です。
 3号前から、4号続けてお読み頂ければ幸いです。
 ・・・前説も、含めて(笑)。
 (長くて本当にすみません)。
   * * * * *
 龍泉寺に行こうとする時は雨が降っていたのだが、寺についたら上がっていた。
 空気が気持ちよく澄んでいる。
 さっそく、ふたり揃って境内へ。
 本堂らしき建物が目に入ったのだが、その脇のお堂がとても気になり、そこを先

お参りし(そこが「龍が奉られているお堂」だということはパンフレットで後に知

た)、そこから回り込んで、本堂へ。
 蝋燭を灯し、お線香を立て、お賽銭を入れてお参り。
 さて帰ろうと、敷地内の大きな池の上を、入り口から本堂へとまっすぐ続きつつ

かっている太鼓橋を渡ろうとして、橋の竣工日時が刻まれた碑に目がとまった。
 「昭和40年6月6日竣工」
 私の、生まれた日に、かかっていたのだ。
 小角様へと続く、橋がーーー。
 それから一路、龍神村へと向かう。
 雨という予報にも関わらず道中は陽が差し込み、木々と川に囲まれた山中の道を

気持ちよくドライブすることができた。
 龍神村に入る直前、さぁっと軽く雨が降ったが、入ったと同時にやむ。
 まるで「浄化の雨」だ。
 せっかく来たのだからと、龍神温泉の元湯に入ってみることにする。その頃には

再び陽が差し込んできていて、何の刺激もないゆったり浸かれる露天風呂を、私達

存分に手足を伸ばして楽しむことが出来た。
 帰りがけ、名所はないかと見ると、「曼陀羅美術館」なるものがあった。
 入ろうと近づくと、生憎、休館中だ。
 何が展示してあるのだろうと解説を読んでみると、どうやら古代チベットの美術

などが飾られているらしい。
 チベットの僧が、戦火を逃れて大事に護り運んだ美術品を委ねられたもののよう
だ。
そういえば、高野山はチベットと深い縁があった。
 そう思って立ち去ろうとしたとき、その文面の中のある人物の名前が目にとまっ
た。
 「文成公主」。
 昔、唐の国からチベットへと、政略結婚で贈られた公主の名。
 つい先日、「風の王国」というドラマCDで、私が演じたばかりの。
 思うところはたくさんあり、まだまだいろいろ見たかったのだが、時刻は16時に

ろうとしていた。山間の村は、そろそろ陽が翳ってくる。
 暗くならない内に高野山へと思い、車を出した途端に、空の様子が一変した。
 さっきまで差していた陽はあっという間に雲に隠れ、重い空気がたれ込め、雨?
 
と思ったら、なんと!
 「雹」が降ってきた・・・!
 バラバラバラバラ、フロントガラスが、足止めするように音を立てる。
 時々「ゴッ!」というくらいの大きいものまでが会話の声を遮るくらい叩きつけ
る。
今にもひびが入りそうだ。
 3月の終わりに雹なんて。山の中ではアタリマエかもしれないが、都会育ちの私

とって、この大きさは脅威だった。あまりの衝撃に息を呑んだが、このままでは後

大変、と車を出すことに。
 ゆっくりゆっくり、小降りになったら速度を上げて、視界を確保しつつ走り続け

ようやく雹の圏外に出たかと思った頃、雨のそぼ降る、薄暮の高野山についた。
 初めて来たときは、軽く流し見しただけ。
 2度目に来たときは、ファンのみんなと一緒だった。
 そんな慌ただしかった過去2回の来訪が嘘のように今日は静かな佇まいーーーい
や、
もともと、ここはこうなのだ。
 慌ただしかったのは、私。
 私の心の、内側だった。
 今日は母と二人きり。名前も名乗らず(今の本名で入ったので)、特別扱いもな
く、
「一度お会いしましたか?」と言う問いを笑ってかわしつつ、一番安い部屋へと案

される。
 静かだ。とても、静かだ。
 外へ出るのを拒むような激しい雨もこの部屋の中までは不思議と音を伝えてこな
い。
何もなく、ただシュンシュンとストーブが時折声を上げる中で、私は、この文章に

手した。
 じんわりしみてくる気配に、心を浸しながら。
 不思議な旅を、振り返りながら。
 六文銭の提灯の下で明かした夜はすぎ、雪景色が辺りを包んでいた。
 凍るような高野山の朝。
 こんな朝を、あの人は、幾度迎えたことだろう。
 朝の勤行をすませ、慎ましやかな朝食をとり、お暇することに。
 降りるほどに陽が差してきて、温かく気持ちよい空気の中を、窓を開けて走った

 携帯が留守電を告げている。やっと圏内に入ったのだ。
 帰ろう。私の、戦場へ。
 愛するひとたちのもとへ。
 先週、ドラマCD「SAMURAI DEEPER KYO」の第4巻の収録があった。
 メインエベントは主役の狂さんと幸村の一騎打ち!
 60分×2枚組で、計120分。本当に壮~絶な、闘いだった(笑)。
 キャストがすごく忙しいメンツばかり30人近くも(!)いるためいつもはヌキ録

(本編に参加できない人が別に録音すること)になってしまうのに、そのワリには

くさんの役者が揃っての収録。楽しかった!
 あまりにも楽しくて、この時間が終わってしまうのが惜しくて、霧隠才蔵役の松

さんとかと「呑んで帰りたいですねー」と言ってたんだけど、あまりにも遅くなっ

しまったために、泣く泣く帰宅することに。
 今回の収録が、たぶん、幸村役としての最後の収録。
 ライブでキャラクターソングを歌うことはあるかもしれないが、恐らくもう二度
と、
幸村のセリフを口にすることはないだろう。
 せめて自分ひとりでもケジメを。家でひとり晩酌ダ! と意気込んで帰ったのに

その日に限って、家の日本酒が切れていて!!!
 もーーーーーーーーー、・・・ガックリ。
 こんな気持ちのままじゃ、別れらんねぇよ、幸村ァ!!
 と、その日はひとり、くだを巻いてたんだけど(笑)。
 別れなくてもよかったんだね。きっと。
 そうなんだね。
 偶然は、必然。
 出会ったことは偶然かもしれないけれど、関わったことは本当だから。
 私の身体を通して、感じて、触れたことは本当だから。
 何に呼ばれて、どうしてこうなったのか。
 本当のところなんて、分からない。
 ただ、逢えたことに感謝。関われたことにも感謝。
 私の身体に残っている、たくさんの記憶を抱えながら、一緒に歩いていきたい。
 これからも。

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