[情報] 緒方恵美の、銀河で、ホエホエ。vol.87

作者: OGATA (HARUKA)   2009-05-15 23:42:05
◆◇ 「 緒方恵美の、銀河で、ホエホエ。」 ◇◆   2009年2月20日発行
                vol.87「ベサメムーチョ! 2/5」
(注:これは「ベサメムーチョ!」5号続きの2号目です。Vol.86からどうぞ)
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 翌日、リハーサル。
 昨日の教訓で、朝から念入りな打ち合わせを重ねた後、街へ出て簡単な買い物を済
ませ、それからイベント会場へ向かいました。
 アバウトな国らしく、なんと、音出し開始予定時刻から、4時間以上経過してからの
リハーサルスタート! 
 ……でもそんなことはまだどうでもいいのです。
 それ以上に大変だったのは、その内容でした。
 何もかもが打ち合わせ通りにいかない、揃わない。通じないのです。
 あれだけ念入りに打ち合わせしたのに、リハーサルは今日、この時間だけしかでき
ないのに。時間だけがどんどんどんどん、ただ無為に過ぎていく……。
 ステージマスター(舞台監督)らしき人もいなくて、みんながバラバラなことを言っ
たりやったりしていて。私自身がイチからすべての指示をだしなおさなくてはどうに
もならない状況になり、でもそれもなかなか通じていかなくて、、、気づいたら退館
時刻(リハーサル終了)が目の前に迫っていました。
 ……怖かったんです。私は。
 こんな、何も整っていない状態のまま、明日からたったひとり、ステージにフロン
トであがっていかなければならないことが。
 何かトラブルがあっても、日本ならば、適当なMCで流して、笑いに持って行って何
とかさせられる。フォローもできる。
 でも英語さえ通じにくいスペイン語圏では、どうにもならない。
 やっぱりもっとシンプルにしておけばよかった。
 声優を呼ぶ初めてのステージ、求められることになるべく応えたいと思い、なるべ
く希望を取り入れつつ、現地のみんなにわかりやすく、でも負担は最小限に抑えた…
…つもり、だったのに。
 スタッフ陣に細かいニュアンスを伝えたくても伝わらない、そんな苛立ちが、相手
を受け入れようと努力するたびに、翻って自分への攻撃にかわっていく。
 折れそうな自分を激しく叱咤する、もうひとりの自分。
 まるで心と体が別の人間になってしまったかのようでした。
 午前3時にやっと部屋に戻り、迷惑をかけた日本のスタッフに長い時間をかけて謝罪
メールを打ち、送信した直後から、急に襲ってきた激しい吐き気と腹痛。
 自分で自分に驚きました。こんなことは初めてだったから。
 理由は明白です。
 私の心と肉体が、私の理性を拒絶した。それだけ。
 だから大丈夫、このまま部屋でしばらく耐えれば……誰にも迷惑をかけたくなかっ
た。でもそれが、却って大迷惑をかけることになってしまいました。
 異変に気づいた向かい側の部屋の方がフロントに通報。それから大騒ぎに。
 すべては私の未熟。輪をかけてガッツリ落ち込みました。。。
 それでも、とにかくステージに上がってしまうことさえできれば! と。
 ひとつだけでも、ステージをこなすことができさえすれば、後は! そう思っていま
した。いや、思いこもうとしていたというのが正しいのかもしれません。
 それは、私が知っていたから。
 どんなに状況が悪くても、自分のココロがガタガタでも、ステージに上がれば「緒方
恵美」になれる。
 オガタってヤツはそういうヤツだと。そのオガタを信じよう、と。
 そして、本番を迎えたのです。
 (vol.88に続く)

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