No.363 念獣
煽り:船内を満たす謎の言葉(キーワード)
護衛を引き連れて通路を歩くチョウライ(肌が黒くなってる)
チョウライ「ワブルの王室警護兵が全滅?」
護衛「はい。軍内部からの情報なので確かです。残るのは外部から雇ったハンター2名
だけとの事です」
チョウライ「ふん誰か知らんが赤子から狙うとはな…」
チョウライ「ん…待てよ。最下位の王子に付いている警護兵は全員他の王妃に帰属して
いるはず」
護衛「はい」
チョウライ「ならば全滅はおかしくないか?…まさか疑われるのを避けるために味方も
ろとも始末したってのか!?」
護衛「実はその件で少々問題が…」
チョウライ「…ネンジュウ?」
護衛「とりあえず護衛全員に確認したのですが詳しい事を知る者が我々の中にはいませ
ん」
護衛「しかし警護兵全滅のカギはこの言葉にありそうです」
思案するチョウライ
見開きで王子居住エリアの見取り図
セレモニー会場にて
カミーラ「御父様、カミィねハッキリさせておきたい事があるの」
カミィ「『生き残る』という言葉は複数の捉え方が出来てしまうから『脱落した者』の
定義を曖昧にしていると思うの」
カミィ「生物学上の死ではない脱落を認めないでいただきたいの。いいでしょ?」
ナスビ「ホッホッホ。ニュアンスは違うがチョウライも王になる条件について聞いてき
たホイ」
ナスビ「一字一句違えず答えようホ」
ナスビ「『生き残った唯一名が正式な王位継承者』それをどう解釈するかも含めての継
承戦なのだホイ」
ベンジャミン「くくく。下らぬ心配だなカミーラ」
ベンジャミン「自ら王となる前提で臨むならば他者の定義に拘る必要など皆無!」
カミィ「カミィはイヤ!カミィは世界中の人間をカミィの思い通りに動かしたいの!」
カミィ「まずカミィ以外の王子は死んで欲しいわ!理想は『自ら進んで死んで欲しい!
』」
カミイ「『カミーラが王になるのだから私は死ぬべきだ』って思ってほしいの!」
ベンジャミン「何という思い上がった女よ…!貴様に王の座など狂犬に子守をさせる様
なもの!」
カミィ「?バカじゃない?カミィは子守なんかしないわ!どいて!」
ナスビ「カミーラ兄上に敬意を払いなさい」
二人の前から立ち去るカミィ
カミィ(許せない…!間違ってるわこんな世界!もうカミィが自分で変えるしかない!
)
カミィ(願っただけでは実現しないなんてどれだけ理不尽なのかしら!)
カミィの背後にいる霊獣に変化、無数の乳房の中央から本体?のシルエットが浮かび上
がる
ベンジャミン「父君あれが資格持たぬ者の分をわきまえぬ浅ましき実態!長兄として誠
に恥じ入るばかり!」
ベンジャミン「このベンジャミンが責任をもって枝打ちし!カキンの大樹を守る事この
場で誓いまする!」
ナスビ「うむ期待しているホ」
退室するベンジャミン
無線「ベンジャミン様退席なさいます。第一エリア警戒レベル最大!」
上着を破り捨て上半身裸になるベンジャミン
ベンジャミン(今すぐ殺す!全員殺す!下船など到底待てぬわ!)
ベンジャミン「私設兵体長(バルサミルコ)に伝えろ!まずツェリードニヒを俺の前に
連れて来い!」
護衛「はっ」
ベンジャミン「手段は問わん!ただし殺すな!俺が直々に伐つ!とな!」
護衛「はっ」
ベンジャミンの自室
ベンジャミン「他者に寄生する念獣が俺達に!?ならば念使いの俺に何故それが視えな
いのだ」
バルサミルコ「推測ですが儀式の当事者は念獣を視認出来ない制約があるのかも知れま
せん。もしくは何か条件が不足しているか」
バルサミルコ「ワブル王子の件もそうですが件の念獣が直接ワブル王子の命を獲りにい
っていない事からも我々が知らされていない念獣の生態がありそうです」
バルサミルコ「この生態を他の王子よりも早く正確に把握する事!それが壺中卵の儀攻
略のカギです」
バルサミルコ「その前に行動を起こす事は命取りになりかねません」
ベンジャミン「この俺に待てと申すか…?」
バルサミルコ「はい。理由は主に二点」
バルサミルコ「敵が念獣でありベンジャミン殿に敵の姿が視えない以上単独行動は非常
に危険です」
バルサミルコ「故に護衛計画を大幅に変更する必要があります」
バルサミルコ「もう一点は先程の緊急コールです」
バルサミルコ「『念獣』と『念能力』が全王子とその警護人の共通認識になってしまっ
た以上我々のアドバンテージは殆ど無くなったと言えるでしょう」
ベンジャミン「なるほどハンターか」
バルサミルコ「彼らは全員念の使い手で我々よりもその歴史は古く念の知識はあちらが
上」
バルサミルコ「ただ彼等にとって王子の護衛は二次的な任務でカキンの内部事情にも疎
く情報戦においては我々が圧倒的に有利でした」
バルサミルコ「しかい一名のハンターのアナウンスによって全警護人の『敵の想定』が
明確になってしまいました」
バルサミルコ「これによって念を使える者は警戒レベルを最大に上げる…!これ即ち我
々の『念による急襲作戦』の効果が無になる事と同意!」
ベンジャミン「全く余計なマネをしてくれたものだ。だが少し解せんな…なぜそいつは
わざわざ緊急CHで全員に情報を流したんだ?」
ベンジャミン「オイトから壺中卵の儀について聞いてないはずはないだろう」
ベンジャミン「『その正体が念獣だと判明した』という情報を何故敵側の王子にまで流
したんだ?」
バルサミルコ「さすがベンジャミン殿。我々もそこに引っ掛かりました」
バルサミルコ「まずは『抑止力のため』と考えるのが最も妥当です」
バルサミルコ「実際に我々はその情報を元に計画の変更と待機を余儀なくされています
」
バルサミルコ「ハンター達の本来の任務は暗黒大陸にあります。故に船内での衝突を避
ける為、あえて膠着状態を狙ったと考えられます」
バルサミルコ「これは下位王子の利害とも一致します。武力に乏しい彼等は今回の争い
には消極的でしょうからな」
バルサミルコ「現に他のハンターもアナウンスに呼応して積極的に情報を共有しようと
いう態度を示していました」
ベンジャミン「下位王子と護衛のハンター達が結託して延命を計っているという事か…
」
ベンジャミン「この先ハンターが王子とその念獣をどう扱うかで状況が違ってくるな…
」
バルサミルコ「正に仰る通り!念獣とハンターの能力が未知数な上にその能力次第では
脅威にもなり得ます」
バルサミルコ「更に上位の王子達の私設兵にも念能力者がいるかも知れません」
バルサミルコ「今回の件で念の事を知った他の王子が能力会得の指南を請う可能性もあ
ります」
ベンジャミン「…私設兵を全員ここへ呼べ!」
バルサミルコ「は…!」
バルサミルコ(直情型で最短の道を好むため誤解されやすいが…)
バルサミルコ(ベンジャミン殿はこちらが臆せず理詰めで話情報を提供すれば的確な判
断をされる御方)
バルサミルコ(まだまだ途上である我が国を更なる大国に導けるのは剛柔相備わる彼唯
一人…!)
ベンジャミン「これから諸君には王室警護兵として現在のメンバーと交替で各王子の警
護についてもらう」
ベンジャミン「任務内容は引き続き各王子の護衛及び動向観察の報告を継ぐ形だが『念
獣』という未知数の脅威により非常に危険で高度な任務へと変貌した!」
ベンジャミン「細心の注意を払い念獣とハンターの能力を把握せよ!的が襲ってきた場
合!又は襲撃の意志が明らかである場合には」
ベンジャミン「防衛権行使による武力制圧!即ち『敵の殺害』を許可する!」
私設兵達「イエス!サー!」
ベンジャミン「バルサミルコ、貴様達には俺の念獣が視えているのか?」
バルサミルコ「は!しかと。次代の王に相応しい雄々しき霊獣にございます!」
笑みを浮かべるベンジャミンの霊獣
チョウライの自室
チョウライ(ベンジャミンが私設兵の精鋭を警護兵として各王子に投入してきたか…)
チョウライ(王室警護兵は正式な国王軍兵でなければ配属不可能だが…軍事最高副顧問
の地位にいるベンジャミンの私設兵だけはその資格を有している)
チョウライ(明らかに今回のアナウンスを受けての処置。これはネンジュウについて知
る好機とみた…!)
カミィの自室
カミィ「絶対にカミィの目に入るところをウロウロさせないで!」
カミィ「リビングに一歩でも入ったら殺して!ママ呼んで!」
ツェリードニヒの自室
護衛「いかがいたしましょう?第一王妃の御子であらせますツェリードニヒ様には要請
に従う義務はございませんが…」
ツェリードニヒ「『馬鹿め』と伝えろ。オレ念に集中中」
ツベッパの自室
ツベッパ(緊急アナウンスをした者…場の停滞を狙ってるわね)
ツベッパ「そのハンターの情報が欲しいわ早急にとりかかって」
護衛「は」
ワブルの自室
クラピカ(船内電話は国王軍に管理されていてセンリツ達との通常交信は危険)
クラピカ(警護用の無線は各王子の警護ごとにチャンネルが固定されていて他の王子の
警護兵とは交信できない)
クラピカ(王子居住エリアへの持ち込みが出来なかった別の無線を何とか入手して情報
のやり取りが出来ればいいが)
クラピカ(何をするにも圧倒的に人手が足りない)
ビル「サイールドの能力を使って他の王子を調べられるんじゃないか?」
クラピカ「可能だが闇雲に探すわけにはいかない。必要な情報とターゲットを絞らない
と」
クラピカ「ただでさえ警護に気を配りながらのハイリスクな作業で長時間は出来ない」
ドアのチャイムが鳴る
クラピカ「第一王子の警護兵だろう」
クラピカ(この状況でさらに新たな監視人か…)
侍女が応対する
侍女「はい」
警護兵「先程連絡をしました第一王子帰属、王室警護兵のビンセントです」
ワブルが泣き出す
オイト「どうしたのかしら授乳したばかりなのに…眠いのかもしれません。寝室へ行き
ますね」
オイト「あと新しい方はやはり不安です」
クラピカ「心得ています。玄関エリアを担当してもらいシフトは崩さないようにしよう
」
ビル「わかった」
ビルが何かに気付く
ビル「おいっ!?」
クラピカがビルの視線を追うとそこにはビンセントと心臓にナイフを刺され死んでいる
侍女の姿
ビンセント「いきなりナイフで襲ってきましてね…やむなく…えぇ」
ビンセント「あと毒物らしき小ビンも所持していましたよ…えぇえぇ」
ビンセント「一服盛るつもりだったんでしょうなァ危ない危ない」
ビンセント「というわけで防衛権を行使させていただきました。えぇ」
クラピカ(監視ではなく刺客か…)
次週へ
煽り:放たれし刃!受けるか躱すかへし折るか
フランダースの犬のOP歌詞が最終回と重なって切ない。蝶々は天使だと思う<義博>